-製造元直送の低価格で高品質なお茶作りを目指して-
▲ 狭山茶製造元・長峰園 ~工場全景~
「荒茶」とは、お茶の葉を製茶工場で加工した一時加工品です。この荒茶には、茶の茎や粉、硬葉そして煎茶となる芽茶や本茶などが含まれています。この荒茶をふるい篩分け・切断し、茎茶・粉茶・大型のお茶を取り除いて、火入れしたものがいわゆる「煎茶」となります。
長峰園では製茶業界での最新技術に関する知識の吸収と機械の整備・導入を図り、高品質の荒茶の製造を心掛けております。また荒茶製造ラインはほぼ自動化されており、荒茶製造にかかる人件費等のコスト低減を実現しております。
標準的な荒茶製造ライン
コンテナ→蒸し機→粗揉機→揉念機→中揉機→精揉機→乾燥機
長峰園の荒茶製造ライン
はかり→コンテナ→蒸し機→回転式冷却機→粗揉機1・2→揉念機1→揉念機2→中揉み機→揉念機3→中揉機→精揉機→乾燥機
はかり
▲ 大型台ばかり
毎年、長峰園では10aの茶園から500kg以上の「生葉」が収穫されます。この生葉は収穫と同時に葉内成分の化学変化等により品質の劣化が始まります。高品質のお茶を作るためには、茶葉の摘採から作り始める間での時間を出来るだけ短縮する必要があります。といっても一台のトラックにのる1000kg近い生葉を手ではかりにかけていたのでは、時間もかかる上に、それを行う労働力も相当なものです。
そこで長峰園では、茶園から工場までの移送時間短縮のために、車ごと量れる台秤(だいばかり)を使用し、一度に秤にかけてしまいます。写真のトラックの載っている茶色の鉄板の下に秤があり、工場の中のモニターに重量が表示され、記録される仕組みになっています。
コンテナ
▲ 生葉コンテナ
茶園から輸送されてきた生葉は、すぐに製造工程に移されることが、高品質茶を作る上で重要です。しかし一度に大量の茶葉が工場に運び込まれた時などどうしてもある程度の時間、生葉をストックしておかなければならない場合が生じます。この際、使用されるのが生葉コンテナです。
写真の生葉コンテナは、約300kgの生葉をストックしておけるタイプです。下から水を含んだ風を生葉に直接送り、生葉の変質を遅らせ、高品質状態を保持したままの保存を可能としています。長峰園では約2500kgの生葉をストックできる生葉コンテナを常備しています。
蒸し機
▲ 蒸し機
蒸し機は、ボイラーから発生する蒸気を利用し、お茶の葉を蒸します。「蒸し」の目的には、お茶の葉の発酵を止めること、茶の葉を柔らかくして揉み易くすることなどがあります。蒸し機の中では、生葉を均一に蒸すために羽のついた攪拌のための鉄製の棒と内側がアミで覆われた網胴が高速回転しています。蒸し機が稼動し始めると、新茶の香りが工場一杯に広がります。
回転式冷却機
▲ 回転式冷却機
蒸したばかりの茶葉には、多くの蒸し露が付着します。この蒸し露をすばやく除去しないと、茶の水色が黄色になり、むれた香り/味が出てしまうことがあります。回転式冷却機は温かい空気を蒸し葉に当てて、付着した水滴を除去する機械です。蒸し葉を回転させるのは、均一に水滴を除去するためです。
この工程でしっかりと茶葉の表面の蒸し露を取り除くことによって、荒茶の水色が鮮緑色となります。またこの後の粗揉工程に影響の大きい重要な工程ともいえます。
粗揉機
粗揉機1
▲ 粗揉機1
粗揉機とは、お茶を揉みながら熱風を当てて、乾燥を進める工程です。粗揉機の回転軸には、より手とさらい手が数本づつついています。より手がお茶を揉み、茶葉の中の水分を抽出し、同時にさらい手がお茶をすくい上げて、背面より出る熱風に当ててお茶を乾燥させます。
粗揉機1ではより手のバネ圧を弱くしてあり、揉むよりもむしろさらい手によりお茶を熱風に当てて、茶葉の表面についた水分をとばします。粗揉機2よりも熱風温度は高め、風量も多めになります。
粗揉機2
▲ 粗揉機2
粗揉機2では、より手のバネ圧を強くしてあり、粗揉1である程度まで水分をとばした蒸し葉を揉み込みます。茶葉は揉み込まれることにより中の水分が出てきて、徐々に乾燥が進んでいきます。粗揉機1より熱風温度は低め、風量も少なめにします。
揉念機1
▲ 揉念機1
揉念機とは、粗揉機から出された蒸し葉に錘をかけながら、さらに揉み込む機械です。円柱形の胴の中にお茶が入れられ、上から錘がのせられ、揉盤という丸型の山のついた板の上を回転しながら揉み込んでいきます。
揉念機により、蒸し葉の水分は均一化され、また粗揉工程では不足がちであった「揉み込み」作業が補われ、葉の中心部の水分と旨味が揉み出されるのです。最近の製茶技術研究の中で、製茶工程中の最重要工程とされている場合もあります。
揉念機2
▲ 揉念機2
長峰園の製茶工程では、各機械とも24分で一工程が終了するように調整されております。近年の製茶研究により、「揉念機による『揉み込み』により茶の旨味が増す」という研究結果が出されました。長峰園では、この結果を受けて、これまで2台/48分であった揉念工程を3台/72分に増やしました。この製茶ラインの変更により、旨味の増したより品質の高い荒茶が製造できるようになりました。
中揉み機
▲ 中揉み機
揉念機から出された蒸し葉は、茶葉中の水分が揉み出されているために、大変に「しとり」があります。これを「お茶」にするためには、さらに揉みながら水分をとばして、ヨリ込んで行かなければなりません。
中揉み機は、より手によって揉みながら、背面から熱風を当てて、揉念機によって揉み出された水分の乾燥を進める工程です。中揉み機は、比較的新しい機械です。
揉念機3
▲ 揉念機3
中揉み機より出されたお茶は、やや乾燥が進んだ状態になっています。しかし茶葉の中にはまだまだ水分と旨味が入っています。長峰園の製茶工程では、中揉み機からでた茶葉を さらにもう一台の揉念機に入れます。
3台目の揉念機も1台目・2台目と同様に、水分の均一化・「揉み込み」を補うなどの役割があります。一つの製茶ラインに3台の揉念機を配置することにより、茶の旨味を一層引き出すように心掛けております。
中揉機
▲ 中揉機
茶葉を「よる」とは、茶の葉を丸めて、針のようにピンと細く伸ばすこと。中揉み機とはその前段階として、少し乾燥を進めながら「より手」によって形を整える工程。機械の中心部である胴が回転し、中では複数の「より手」がお茶を揉み込みます。茶葉をギュッとつかんでゆっくりと解ける位が中揉機の出し時といわれています。
精揉機
▲ 精揉機
お茶を揉む作業の最後の工程。ここまで来ると水分率13%と茶葉の乾燥はかなり進んでいます。精揉機は、熱した揉盤の上でお茶を転がして少しづつ加重しながらより込む機械で、約40分ほど入れておきます。中揉工程を経た縮れ気味の茶葉は、精揉機によりピンとまっすぐに伸ばされます。
乾燥機
▲ 乾燥機
精揉機によってきれいに伸ばされたお茶は、形を崩さず、保存性を高めるためにすぐに乾燥機へと運ばれます。乾燥機では80℃から90℃位の熱風によりお茶を乾燥させて、水分率5%程度にまで水分をとばします。乾燥機からでてきたお茶は、茶箱に入れられ、真空されて冷蔵庫に貯蔵され、必要に応じて冷蔵庫から出され、再生場へと運ばれます。
蒸し機→乾燥機までの製茶工程を経た、生葉から直接に作られたお茶を「荒茶」といいます。